京都の福祉職場の魅力発信プロジェクト
きょうとフクシのシラセ[ブリッジ]
PROLOGUE
福祉と「衣」について考えていた時に出会った、「100歳になっても、自分のぜんぶを好きでいたいです。」
という株式会社ワコールさんのキャッチコピー。
「100歳になっても、その人らしい生活」を続けられる地域づくりを目指す福祉に携わるわたしたちにも響きました。
誰かの「なりたい自分」を支えているのは、福祉に携わるわたしたちも同じ。そう感じたBRIDGEプロジェクトメンバーが、
ワコールスタディホール京都を訪問し、そのキャッチコピーに込められた思いを伺いました!
―「100歳になっても、自分のぜんぶを好きでいたいです。」というキャッチコピーは、実際に100歳の方がおられる福祉施設で働いているわたしたちにとって、とても印象的でした。
三宅 当社は、創業者の過酷な戦争体験からの復員後すぐに、女性が笑顔でいられることが平和なのでは、というところからスタートし、「美しくなってもらうことが、社会の役に立つ」として展開してきました。美しさとは、時代や感じ方によって異なる、哲学のようなもの。以前は「見た目として○○風になりたい」など外向きの発想が多かったのですが、最近は「自分自身が納得する自分になりたい」というニーズがとても多いんです。このキャッチコピーは、「皆さんがなりたい自分になって、もっと自分を好きになれるよう、お手伝いできることがきっとある」というメッセージです。
―でも、自分が100歳になることってなかなか想像しにくいですよね。利用者さんの中には、何かができなくなるのではないかという不安や、周囲に迷惑をかけたくないなどネガティブな思いをもっておられる方もいます。
三宅 それはあるでしょうね。「100歳になっても自分を好きでいたい」という言葉は、「自分が思ったような100歳になれる自信がない」ということの裏返しかもしれない。だからこそ、100歳をポジティブに迎えるために、「なりたい自分」を自分で考え続けることが大事だと思います。それにはまず、今の自分を大事にすることからではないでしょうか。
―福祉の現場で働くわたしたちは、その方が大切にされてきたことや、どうありたいかを知ろうと様々なアプローチをしています。ご本人の思いを大事にすることは、今を大切に、ということに通じると感じました。
三宅 下着が役に立つこともたくさんあるでしょう。いま在宅時間が増えていますが、たまに人に会う時などに、下着は見えないところで自分を支えてくれるものだと思います。男性も含めて、いい下着や気に入っているもの、快適な着心地が、自信に繋がると思います。
―「なりたい自分」を目指すときに支えてくれるものがあると心強いですよね。
三宅 自分自身の体の変化に対する悩みに関しても、様々なニーズがあります。世代などを超えてその方たちに共通のものを作る、という考えもあるけれど、それらのニーズ一つ一つに応えられるモノづくりやサービスづくりを、私たちは心掛けています。
―歳を重ねると誰でも、ワコールの下着からリハビリパンツに変えなければならないなどの変化が起きますよね。その中でもわたしたちは、「その方がなりたい100%」に近付けられるよう、日々試行錯誤しています。「この施設だったら100歳になってもいい」と思ってもらえる福祉施設を、今つくっているところです。また、周りにおられる家族の負担を減らすことも、わたしたちの仕事です。
三宅 なるほど。福祉施設のあり方も、100歳の自分を考えるヒントの一つですね。
高齢者福祉に限らないですが、福祉サービスを「提供する側」と「利用する側」とは別に、「どちらでもない」わたしたちのような立場があって、それら3つの立場でやれることが全部違っていますよね。いろんな立場の方が集まって、お互いがやれることを話すことができれば、さらに新しい力になるのではないか、と感じました。
―ところで、文化的事業にも携わっておられますが、その人らしさや内面にアプローチするという点で、製品づくりと共通した発想だと感じました。
艸川 創業者の想いもあって、広く社会に寄与したいと考えています。“文化的事業の一環として、一般の方に活用していただく場を京都に”と設立したのがこのワコールスタディホール京都です。
三宅 この場所のコンセプトは「美を学ぶ」。見た目の美しさだけでなく、自身の内面や社会の秩序、社会性も含めた美しさを想定しています。自分のための美しさは、元気に歳を重ねるために重要なこと。年代を問わず、「ああなりたい」と思える素敵な人が増えれば、生きる指針は増えてくるし、「なりたい自分」を描きやすくなると考えています。
―「なりたい自分」を実現するのは、働くわたしたちにとっても大切なことのように思います。
艸川 われわれも社員を大切にする企業として、育休取得率も復帰率も100%に近く、男性の育休も増えています。働きやすさは社員との相互信頼であるし、結果的に会社の成長や社会に寄与することに繋がります。ワコールでも、社員が豊かな人生を送り、仕事における能力を発揮できる職場環境の整備に取り組んでいます。
―わたしたちの働く福祉職場でも、働く人が安心して働けるよう、そして未来をえがけるよう、働きがいと働きやすさ、安心できる人材育成体制などに力を入れていて、京都の福祉職場のトップランナー的存在なんです。そして、わたしたちも、こうした取り組みは、福祉サービスの向上や地域社会への貢献にも確実につながると考えています。
―わたしたちも今後、「うちの施設には、こんな素敵な100歳がいはるんですよ」と皆さまにお伝えできるように、福祉のお仕事をがんばっていきたいなと決意を新たにすることができました。本日はありがとうございました。
プロジェクトメンバー 左から
佛教大学3回生:大木 夏実、(福)リガーレ暮らしの架け橋:垣内 詳美、(福)レモングラス:齋藤 乃里子、(福)リガーレ暮らしの架け橋:西村 翼、(福)南山城学園:坂本 瑠
今回の取材にご協力をいただいたワコールの皆様
三宅 譲さん
総合企画室 広報・宣伝部 ワコールスタディホール京都企画・運営課
1991年入社。入社以来、商品開発、ブランド開発などを担当し、現在は「美を学ぶ」というコンセプトの新たな取り組みである本ホールの企画・運営を担当。
艸川 康代さん
総合企画室 広報・宣伝部 広報・宣伝課
2006年入社。ブランド販促を経て、現在は商品広報・PR、広告企画を担当。
カリエレロ エリカさん
総合企画室 広報・宣伝部 広報・宣伝課
2020年新卒入社。商品広報・PR、広告企画を担当。