イメージを超えた向こう側 「ありがとう」は、奥深いこの仕事のほんの一部だった。

【もらう】だけでなく【受け渡し】するもの。あえて【もらわない】ことも。

「ありがとうを言われることが、福祉の仕事のやりがい」とよく聞きますが、実は違和感があります。なぜなら、それがゴールではないから。実際に働くと、職員から利用者さんに「ありがとう」を言うことも多いです。たとえば、テーブルを拭くのを手伝ってもらうとか。むしろ、職員から感謝を伝えようって意識することもあるから、『そこは逆なんだよ』って知ってもらいたい。

もう一つ、“生活のお世話をする”ことではなくて、利用者さんの“自立を支援する”仕事だから、こちらが「ありがとう」を言わせていないか、振り返ることもある。職員が手を出しすぎていないか、その方が何かできる機会を奪っていないか、って。
ある子どもさんが「ジュースを飲みたい」と言ったとき、どうぞと渡すことではなくて、「いまは駄目だよ」って伝えることも、その子のことを考えれば必要な支援となる場合もあるんです。
そういう視点で福祉の現場での「ありがとう」を理解してもらうと、もっと福祉への理解が深まって、面白くなるんじゃないかな。

感謝は言葉だけではないし、今すぐわかることばかりじゃない。

福祉でかかわるのは、言葉が話せる方とは限らない。障害があって発語が難しかったり、まだ言葉をしゃべれない乳児にかかわったりすることもあります。
身振り手振りやちょっとした表情の変化でコミュニケーションをとり、言葉以外の受け渡しもします。感謝以外の感情も含め、福祉では大きな広がりを持ってやりとりをしていることも知ってほしい。

あと、目の前の方から今すぐ感謝されるだけでなく、長い時間の流れの中で、お互い感謝を伝え合うこともあります。看取りの時に、ご家族からこれまでの支援について言葉をいただくとか。
すぐに結果が出たり、手ごたえを感じたりする仕事ではないところがあります。でも、時間をかけてあれこれ考えて、やってみて、人間関係を作り上げたり、成長や変化を肌で感じたりできるのは、福祉の仕事の大きなやりがい、尊さだと実感します。だからこそ、いろんな場面で『ありがとう』を受け渡しすることがうれしいんですよね。

福祉を知ることができた”フクシ侍”は、これにて御免!

次回第5号では、福祉の仕事のことならいくらでも語れる“フクシの達人”たちによる相互インタビューで、さらに福祉を深掘りします。2022年3月発行予定!乞うご期待!

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